2018年04月08日

【夢三夜】黒澤明 映画『夢』より

桜花の終焉と時を同じくして、異邦人たちによる花の宴も酣(たけなわ)を迎えようとしていた。桜海の波間にたゆたひしは遥か太古の記憶。これは夢なのか、現(うつつ)なのか、境界はもはや瑣末な問題である。人々の祈りは春の風に吹かれ、やがて遥か宇宙の静寂へ消えてゆく...
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出逢いと別れ、人生と運命、偶然と必然、時にそれは月並みな言葉で表現される。しかしそれは途切れることなく連綿と繋がる連続性ではなく断続した一瞬一瞬が無限に積み重なった総体である。

チヨゴロー「おい純よ、涙を拭いて前に進め!不条理なこの世界をただ前進するのだ。ふりむくな、ふりむくな、お前のうしろには夢はない!」

さようならあなた。忘れられぬあなた。最後にふたりを包んだのは花びらの桜雨。私の言いかけた言葉も 頬をこぼれる涙も 全ては季節の雨に流されてゆく...

その夜、私はこんな夢を見た。

#小椋千代五郎 #雑系 #雑系こけし

jetlink_roki at 16:29|PermalinkKOKESHI/こけし戦後 

2018年04月01日

【夢ニ夜】黒澤明 映画『夢』より

この週末は、仕事場のこけし棚で暇を持て余していたチヨゴローたちを連れ出して、近くにある桜の名所を訪れてみた。そこでは儚く散りゆく桜の海を舞台に異邦人たちによる密かな花の宴が始まろうとしていた。
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「それは焼けるような太陽の光のせいだ」カミュは自著小説『異邦人』において人間の存在になんらかの意味を付与しようとすることを強く拒絶した。我々はあらゆる場面で"合理的な意味"を求めるが、それに相反してこの世界では"不条理"が常である。それはカミュの思想の根幹をなす部分でもある。『旧約聖書』における異邦人とはユダヤ人以外の非ユダヤ人、即ちキリスト教徒を指している。

チヨゴロー「おい純よ!たしかにこの世の中は不条理や理不尽で満たされている。しかしながら生きるのだ。筋も道理も立たないこの世界をただ粛々と生きるのだ!」

子供たちが空に向かい 両手をひろげ
鳥や雲や夢までも つかもうとしている

過去に福島の土湯温泉を襲った洪水の受難はパプテズマ(洗礼)の象徴である。幾度の受難を乗り越えて土から湯の力湧き出る大地は新生する。そして、土湯のこけしに描かれたロクロ模様は遥か神の国まで上昇する”千段巻き”。どの系統にも分類されず雑系と呼ばれたこけしたちは、かつてユダヤ人に迫害されたナザレの異邦人を連想させる...

その夜、私はこんな夢を見た。

jetlink_roki at 16:25|Permalink今晃コレクション 

2018年03月07日

【夢一夜】黒澤明 映画『夢』より

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春はいつ来るでおじゃるか
春はじき来るでおじゃるよ

津軽こけし作者の今晃さんより
お雛様の木地玩具が届いた

その夜、わたしはこんな夢を見た

jetlink_roki at 15:50|Permalink今晃コレクション 

2018年02月21日

拝啓、愛しきあなたへ

拝啓、愛しきあなたへ。
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その後お変わりありませんか。こちらは未だ寒い日が続きますが、晴れた日中にはやがて訪れる春の息吹きを感じさせられます。
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先日、いつも通る雑木林にぽつんと落ちた一輪の花を見つけました。淡い桃色をしたこの花は乙女椿という美しい名前で、いつか儚く消えてしまったあなたに似ているような気がしました。

グッバイマイラブ 二人の恋が
グッバイマイラブ 真実ならば
いつかは逢える これが本当の
さよならじゃないの

#荒川洋一 #たこ坊主 #今晃 #こけし #kokeshi


jetlink_roki at 15:53|PermalinkKOKESHI/こけし戦後 

2018年02月15日

「東京下町の風景とこけし⑫」自宅本棚/高橋忠臣、高橋美恵子

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(左) 高橋美恵子がデビュー前に製作した習作こけし6寸、昭和57年作。父は高橋佳隆、兄は高橋通。父兄と同様に楷書体の筆法を特徴とする作者だが、その初期作は茫洋とした情味を感じさせる表情で味わいが深い。
(右) 高橋忠臣のこけし3寸は、戦前の昭和15年作。高橋忠蔵の実子。26歳で夭逝したため、こけし製作期間は僅か一年間。忠臣のこけしは数える程しか存在が確認されておらず、資料的観点からも貴重な一本である。

西の彼方(そこ)へ行けば
どんな夢も かなうというよ

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インド関連の旅行本と福島県 飯坂温泉の鯖湖こけしを飾った自宅本棚にて。鯖湖こけしに描かれたロクロ模様は、中国から伝来したチャルメラと呼ばれる唐人笛の意匠が元になったとの説がある。文化や宗教は西方より伝播するという世の習いに従って大陸を遡れば、あの独得な蒔絵模様のルーツは仏教発祥の地インドへと辿り着くのでは?...こけしと旅の本が並んだ棚を眺めながら空想の羽を広げてみるのもまた一興である。
※この記事は、『こけし手帖』平成30年1月号(684号)「東京下町の風景とこけし」に加筆したものです。

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当ブログの連載「東京下町の風景とこけし」全13話をまとめた、『こけし手帖』平成30年新年684号が届きました。

jetlink_roki at 16:10|PermalinkKOKESHI/こけし戦前 

2018年01月31日

津軽こけしとりんごの帽子/今晃

「MINGEI JETLINK/ジェットリンクの民芸」トークショーが無事に終了しました。途中参加も含め定員20人超えのお客さんにご来場いただきました感謝!
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本日はいつもの大学学食でランチしました。トークショー終わりに会場のDECOLA.で購入したこけしの帽子は「りんご=津軽」のイメージで今晃さんのこけしにピッタリでした。ぜひチェックしてみてください。
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本日のランチメニュー550円です。実家の母から送られた梅干を持参して、健康に良いと聞いたのでブロッコリー多めです(笑)

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次回は、夏頃に「こけしと七夕の夕べ~納涼こけしトーク」(仮)を予定してますので、今回逃してしまった方もぜひ遊びに来てください。


2018年01月29日

「東京下町の風景とこけし⑪」里見公園/松田徳太郎、小椋千代五郎

雲の隙間から幾筋の光が差し込める、雨上りの里見公園にて。
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優しい木漏れ日が降り注ぐ木立では、名も無き雑木とかつて雑系と呼ばれた異形のこけし達が密かな宴に興じている。近年では”独立系”と改称されたりもするが、昔日さながらの雑系という呼称を私は好む。そこには差別的な意味合いも系統における隔たりもなく、伝統の日陰に咲いた雑草はひたすら懸命でいて頑なに力強い。雑系こけしにはそんな心象あるいは共感めいた想いを抱いてしまう。

~鹿間時夫氏が夢に見たこけし~
写真左は、岩手県盛岡の木地業・松田徳太郎(1889~1964)の作とされる描彩が加えられたこけし6寸。徳太郎が作るこけしの基本型は無彩色で4寸ほどの長頭キナキナであった。『こけし辞典』では徳太郎の描彩こけしの作者は本人とは別人と推測されており「伝統的な必然性には欠如しているがこの種の南部系描彩こけしの中では秀逸である」と評価されている。徳太郎の描彩こけしは、昭和16年に仙台の桜井玩具店で、3寸、6寸、尺がそれぞれ(各一本づつ?)販売された。鹿間時夫氏がけつけた時既に遅し、店内には3寸が残るのみであった。この件は後に自著の『こけし鑑賞』において「今では6寸は夢となった」と語られた。
※この記事は、『こけし手帖』平成30年1月号(684号)「東京下町の風景とこけし」に加筆したものです。

jetlink_roki at 17:30|PermalinkKOKESHI/こけし戦前 

2018年01月28日

「東京下町の風景とこけし⑩」スイーツパラダイス/佐藤英太郎

スイーツパラダイス上野店にて。
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上品な甘さと口解けの良さが特徴の北海道産生クリームを使用した苺ショートケーキには、かつて甘美派こけしの代表格と呼ばれた祖父佐藤直助の意匠を継承した佐藤英太郎 こけしの木目模様が色鮮やかに調和する。左20歳作、右19歳作。

遠刈田新地における周治郎系列の代表的工人であった佐藤直助が明治23年に考案した木目模様は通常の二倍手間がかかるため特別製として扱われた。やや角ばった大頭、三日月眉に切れ長の目、すっと通った鼻筋、若々しく生命力に溢れる筆勢で描かれた溌剌とした表情は鋭さの中に気品を感じさせられる。

「美しいものが没落する時間にも針は進む」 深沢要
そして、時計の針は過去から現在へ。19歳の呪縛から解放され心身共に充実した印象が伺える佐藤英太郎氏の現在。その運筆の勢いは衰えを知らず力強くなお以て洗練されており、遠刈田温泉の工房「木目」を訪れるこけし愛好家たちを驚かせている。
※この記事は、『こけし手帖』平成30年1月号(684号)「東京下町の風景とこけし」に加筆したものです。

jetlink_roki at 13:46|PermalinkKOKESHI/こけし戦後 

2018年01月27日

「ジェットリンクの民芸」こけしトークショー at 綾瀬DECOLA.

2018年1月27日(土)17:00より、綾瀬の人気雑貨店DECOLA.にて「MINGEI JETLINK/ジェットリンクの民芸」こけしトークショーが開催されました。
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「戦後こけしの秘密」 -『木の花』40年の功績と呪縛-
40年の呪縛-蒐集家垂涎の英太郎19歳こけし。その仕掛人とカラクリとは?
40年の呪縛-40年経過した現在も影響が続く「こけし裁判」の謎を紐解く。
40年の功績-戦後の人気こけしBEST3を徹底解析します。
40年の功績-戦後最大の発見「岩松直助文書」と第二次こけしブームの終焉。
40年の秘密-第二次こけしブームで得した天才、損した天才。
40年の秘密-最後に、カリスマ不在となった今後のこけし界の行方は?
40年後の今-新時代に向けて、新たなる伝統こけしを提唱します。

イベント会場では、柳宗理やミナペルホネンの生地を使った一点物の「Fabrickokeshi/ファブリッこけし」を展示しました。トーク終了後には「ジェットリンクの民芸」新作こけし&新作ファブリッこけしを頒布をさせていただきました。
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秋田県大館の作者・今晃さんの斎藤幸兵衛型、佐藤伊太郎型、本人型こけし。
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福島県猪苗代の作者・荒川洋一さんの岩本善吉型たこ坊主、小椋千代五郎型こけし。

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一年ぶりに「MINGEI JETLINK/ジェットリンクの民芸」新作玩具が完成しました。秋田県由利本荘のこけし作者・佐藤こずえさんに木地玩具を製作いただきました。その名も「ヤキモチえじこ」です。
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ヤキモチえじこver.火鉢
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ヤキモチえじこver.七輪

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2018年初春の候にお送りする「MINGEI JETLINK/ジェットリンクの民芸」新作は、秋田県の由利本荘で古くから伝統として受け継がれてきた鳴子系本荘こけしを継承する佐藤こずえさんに木地玩具を製作いただきました。えじこのデザインには、本荘こけしの伝統的な”井桁模様”と”菊模様”の意匠を取り入れました。えじこの描彩には、真っ白で美しいミズキ材の木肌や木目を塗り潰してしまう顔料は使用せず、透明感のある染料のみで描彩が施されます。日本が誇る職人技と懐かしさの中にも新しさを感じさせるジェットリンクの郷土玩具をお楽しみください。 佐藤こずえ作/本荘こけし型ヤキモチえじこ-SOLD!

jetlink_roki at 14:37|Permalink今晃コレクション 

2018年01月26日

「東京下町の風景とこけし⑨」里見公園/宮本永吉、長谷川清一

仕事場から近場にある桜の名所里見公園にて。
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江戸時代の長編小説『南総里見八犬伝』の舞台としても知られている土地で、かつては絢爛豪華に花を咲かせた1mをゆうに超える桜の切り株と、在りし日に子供達の遊び相手になった外鳴子こけし群。現在は互いにその役目を果たし終えてほっと安堵しているのか、寂しがっているのか。
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こけしを子供から遠ざけたのは大人ではなくて、
都市から流入した新興玩具であった。
いや、時という不可抗力であった。
西田峯吉『こけし風土記』(1961)
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(中)宮本永吉こけし6寸は昭和6年に橘文策氏が岩手県一関の作者を初訪問した際に求めたもの。同著『こけしと作者』『こけしざんまい』掲載品。(右)永吉こけし8寸は人間国宝の鈴木鼓堂氏旧蔵品。(左)長谷川清一のペンキこけし7寸は橘文策氏の旧蔵品。全て昭和一桁台の作。原産地から離れた土地で作られた鳴子系こけしは外鳴子と呼ばれ、同時代の鳴子では失われた古鳴子の情味や古い様式をその姿に色濃く残す。
※この記事は、『こけし手帖』平成30年1月号(684号)「東京下町の風景とこけし」に加筆したものです。

jetlink_roki at 13:24|PermalinkKOKESHI/こけし戦前